日本のプロ野球を監督の目線から描いた作品です。
選手やコーチ、そしてオーナーとの確執があり、プロ野球の監督に現実的にありそうで非常に興味深く読むことができました。
一般人の僕には、プロ野球の表舞台しか見えないので、裏事情は想像するしかないです。
「監督の問題」はそんな想像の世界をリアルに描いているようでした。
プロ野球が好きで、内情に興味ある僕には、ホントにおもしろいストーリーでした。
本城雅人著「監督の問題」とは?
現役引退したばかりの宇恵康彦が、いきなり弱小球団の監督になる話です。
この球団は、新潟を本拠地としており、できてからまだ3年目。
成績も最下位続きで、シーズンごとにオーナーが、監督を変えているんです。
物語は、2月の沖縄キャンプから始まり、シーズンが終わるまで描かれています。
宇恵はコーチの経験もなく、監督になったので、何をどうしていいか分かりません。
あまりにも人任せなので、プロ野球の監督って、こんなにもやることないんだって思ってしまいます。
ところが、キャンプも終盤になり、シーズンが始まる頃には、宇恵の個性も少しずつ現れてくるんです。
ある問題があった選手をキャンプ中に、他球団へトレードにだしたことで、選手たちもまとまっていきます。
ずっと、最下位だった弱小球団が、シーズン終盤まで、クライマックスシリーズ出場争いをするまで、成長するんです。
プロ野球の監督と選手の確執!!
プロ野球ではたまになんでこの選手がトレードされるの?ってことがありますよね。
実績はあって、そのチームには欠かせない存在なのに、どうして?
事情を知らないファンとっては、不可解なトレードでいろんな憶測が飛び交うことも・・・
そんなときに考えられるのが、監督と選手の確執ですね。
「監督の問題」でもここがしっかりと描かれています。
やっぱり、現実でもこんな事情だろうなって思えてしまいます。
「監督の問題」の中では、チームの勝ち頭で実績がある投手がトレードされます。
新人監督の宇恵に対して最初から舐めていて、他の選手にまで悪影響を及ぼしていたんです。
宇恵は、ここでトレードに出すという思い切った決断をするんです。
それから、コーチ陣との確執も。
宇恵と同じ時期にやってきたのが、優勝請負人と呼ばれていた投手コーチでした。
この投手は、自分のやり方に自信を持っており、それを曲げないから、宇恵もどうしていいか分かりません・・・
投手コーチの支えもあって、投手陣が踏ん張って、チームの快進撃ささえているんです。
なので、宇恵も投手コーチには逆らえませんでした。
コーチの権限が強すぎると監督にとっては良くないと思うけど、ここもうま乗り越えていくんです。
最後は、オーナーとの確執。
シーズンも終盤になると、オーナーが出てきて、成績のことでうるさくなってくるんです。
もし、クライマックスシリーズに出場できなかったら、どうなるか?最後までここが見どころでした。
とにかく、監督といろんな人の人間関係が、興味深く描かれているのが、読み応えがありました。
宇恵を陰で支えてくれた奥さんの存在も大きかったです。
まさに、プロ野球の裏事情が知れたって感じですね。
徳を積んだものが成功する?
「監督の問題」を読んでいて、大事だなって思ったのは、徳を積むってことです。
プロ野球ってチームによって、実力の差はあるといっても、紙一重のところが大きいんですよね。
プロ野球の勝率って、優勝チームでも6割、最下位チームでも4割なんです。
5試合して、3勝2敗ペースだと、優勝争い。
逆に、2勝3敗だと最下位争い。
短期的にみるとたった1勝差なんですが、シーズンだとすごい差になるんです。
そして、この2勝するか3勝するかも、紙一重の部分があります。
エラーをして負けることもあれば、勝つこともある。
コントロールミスをして、ど真ん中に球が行ってしまったけど、打ち損じで勝ってしまう。
そのときは、ラッキーだと思えても、強いチームって実力以外にもこんなことが続いていくんです。
それが、なぜ起きるかといえば、普段の行いなんです。
いいことをすれば、いざという時いい結果が付いてくる。
宇恵監督は、徳を積むってことを選手に教えるんです。
だから、道具を大事にしなさいとか、子供に教えるようなことまで、選手に言っていました。
技術とは関係ないけど、こいうところも大事なんだなって考えされられる場面でした。
プロ野球の監督じゃなくても、これは伝えることができますよね。
それに、僕も普段の生活からそうしなきゃいけないって思いました。
いざといときの勝負強さって、普段の行いから来てるんですね!!
プロ野球が好きな人だったら、すごく楽しめる物語です。